ポジティブ行動支援(PBS)とは、当事者のポジティブな行動(本人のQOL向上に直結する行動)をポジティブに(罰的ではない肯定的、教育的、予防的な方法で)支援するための枠組みのことです。また、ポジティブ行動支援は個人の行動のみを標的とするのではなく、その周囲の人々、あるいは周囲の人々を取り巻く様々な状況も分析とアプローチの対象と捉え、持続的な成果を生み出すための仕組みづくりを目指します。
ポジティブ行動支援においては、行動の理由を明らかにして、その理由に基づいた支援計画を立てることが目指されますが、その過程におけるアセスメントや適用される様々な技法は応用行動分析学(Applied Behavior Analysis:ABA)に基づくものです。
ポジティブ行動支援は米国において1990年代に障害のある方々の行動の問題に対する「罰的・嫌悪的な方法」に反対する運動、そしてノーマライゼーションとインクルージョンの運動を契機にして誕生しました。そしてポジティブ行動支援は、「当事者を中心とした意思決定」、「例えば大学の実験室のような非日常的な場面に限定されない、当事者の実際の生活の場における成果」を重視しながら発展を遂げていきます。
具体的には1999年にポジティブ行動支援の専門誌であるJournal of Positive Behavior Interventionが刊行され、2003 年にはポジティブ行動支援の進歩に貢献するための国際組織としてAssociation for Positive Behavior Support(APBS)が 設立されました。そしてAPBSが設立されAPBSネットワークが組織化されるようになり、その1つとして2017年に日本ポジティブ行動支援ネットワークが誕生しました。
ポジティブ行動支援は知的障害や発達障害のある方々の行動支援の枠組みとして誕生したという経緯があるため、学校教育、障害福祉、家族支援などが主なフィールドといえます。
特に学校教育に関しては、米国において「学校規模ポジティブ行動支援」(School-wide PBS)の成果が多く報告されており、障害児教育に限定されない成果が報告されています。また、上記のフィールド以外にも「行動」の問題に関わる全ての現場がポジティブ行動支援のフィールドとなりえます。
2022/04/19